2016年03月01日
その話をすることさ
「たぶんな。だが知り合ってからまだ半年にしかならない、怪我から回復しかけの人間に、セフレーニアの身の安全を託せるか」
カルテンはスパーホークに悪口雑言を叩きつけた。
「義務なんだよ、カルテン」スパーホークは穏や中醫診所かに言った。「義務を果たすためには、いろいろと楽しいことをふい[#「ふい」に傍点]にしなくちゃならない。言ったとおりにしてくれ。シーカーのほうはあとで何とかするさ」
カルテンはなおも悪態をつきながら、馬首をめぐらして仲間のところへ戻っていった。
「危うく決闘になるところでしたよ」クリクが言った。
「わかってる」
「カルテンは腕が立つけど、かっとなりやすいのが珠《たま》に傷ですね」
二人は馬の向きを変え、村のほうへと丘を下っていった。
家々は丸太造りで、屋根は草で葺《ふ》いてあった。村のまわりは切り拓《ひら》かれて、家並みから二百五十フィートあたりのところまでは、木の切り株の残る畑になっている。
「開墾はしてるみたいですけど、家庭菜園といった程度ですね。どうやって暮らしを立てているのか、やっぱり謎《なぞ》ですよ」
しかし村の中に入ると、その謎はすぐに解けた。大勢の村人が、素朴な架台の上に載せた丸太から材木を切り出していたのだ。乾燥させるため家々の脇に並べられた材木の用途は明らかだった。
一人が鋸《のこぎり》を引く手を休め、汚い布で額の汗をぬぐった。
「宿屋ならないぞ」スパーホークに向かってぶっきらぼうに声をかける。
「宿屋を探してるわけじゃないんだ、隣人《ネイバー》。ちょっ二手Toyotaと知りたいことがあってね。ガセック伯爵のお屋敷まではどのくらいかな」
男の顔がわずかに青ざめた。
「気に入らないくらい近くですよ」男は黒い甲冑に神経質そうな目を向けた。
「何かまずいことでもあるのかい」クリクが尋ねる。
「まともな人間はガセックには近づかない。たいていは、え嫌がるもんだよ」
「同じような話をヴェンネでも聞いた」とスパーホーク。「伯爵の屋敷に何があるというんだ」
「はっきりとは知りませんよ」男はそわそわと答えた。「この目で見たわけじゃないんです。噂を聞いただけなんで」
「どんな噂だね」
「あのあたりで人がいなくなるんだそうです。二度と姿を見かけないんで、本当に何があったのかは誰も知りませんけど。でも伯爵の農奴も逃げ出してるんです。そんな厳しいご領主ってわけでもないのに。あのお屋敷では何か邪悪なことが起きてるんですよ。このあたりの者たちはみんな怖がってます」
「邪悪の元凶は伯爵だと思うかね」
「それはちょっとないでしょう。伯爵はこの一年、ほとんど帰っていらっしゃいませんでしたから。旅の好きなお方でね」
「わたしもそう聞いている」スパーホークはしばらく考えこんだ。「ところで、最近スティリクム人を見かけなかったかね」
「スティリクム人ですか。いいえ、連中はこの森には足を踏み入れません。このあたりの人間はスティリクム嫌いで、そのことはよく知れ渡ってますから」
「なるほど。伯爵の屋敷までどのくらいの距離だと言ったかな」
「言ってませんよ。まあ十五リーグってとこです」
カルテンはスパーホークに悪口雑言を叩きつけた。
「義務なんだよ、カルテン」スパーホークは穏や中醫診所かに言った。「義務を果たすためには、いろいろと楽しいことをふい[#「ふい」に傍点]にしなくちゃならない。言ったとおりにしてくれ。シーカーのほうはあとで何とかするさ」
カルテンはなおも悪態をつきながら、馬首をめぐらして仲間のところへ戻っていった。
「危うく決闘になるところでしたよ」クリクが言った。
「わかってる」
「カルテンは腕が立つけど、かっとなりやすいのが珠《たま》に傷ですね」
二人は馬の向きを変え、村のほうへと丘を下っていった。
家々は丸太造りで、屋根は草で葺《ふ》いてあった。村のまわりは切り拓《ひら》かれて、家並みから二百五十フィートあたりのところまでは、木の切り株の残る畑になっている。
「開墾はしてるみたいですけど、家庭菜園といった程度ですね。どうやって暮らしを立てているのか、やっぱり謎《なぞ》ですよ」
しかし村の中に入ると、その謎はすぐに解けた。大勢の村人が、素朴な架台の上に載せた丸太から材木を切り出していたのだ。乾燥させるため家々の脇に並べられた材木の用途は明らかだった。
一人が鋸《のこぎり》を引く手を休め、汚い布で額の汗をぬぐった。
「宿屋ならないぞ」スパーホークに向かってぶっきらぼうに声をかける。
「宿屋を探してるわけじゃないんだ、隣人《ネイバー》。ちょっ二手Toyotaと知りたいことがあってね。ガセック伯爵のお屋敷まではどのくらいかな」
男の顔がわずかに青ざめた。
「気に入らないくらい近くですよ」男は黒い甲冑に神経質そうな目を向けた。
「何かまずいことでもあるのかい」クリクが尋ねる。
「まともな人間はガセックには近づかない。たいていは、え嫌がるもんだよ」
「同じような話をヴェンネでも聞いた」とスパーホーク。「伯爵の屋敷に何があるというんだ」
「はっきりとは知りませんよ」男はそわそわと答えた。「この目で見たわけじゃないんです。噂を聞いただけなんで」
「どんな噂だね」
「あのあたりで人がいなくなるんだそうです。二度と姿を見かけないんで、本当に何があったのかは誰も知りませんけど。でも伯爵の農奴も逃げ出してるんです。そんな厳しいご領主ってわけでもないのに。あのお屋敷では何か邪悪なことが起きてるんですよ。このあたりの者たちはみんな怖がってます」
「邪悪の元凶は伯爵だと思うかね」
「それはちょっとないでしょう。伯爵はこの一年、ほとんど帰っていらっしゃいませんでしたから。旅の好きなお方でね」
「わたしもそう聞いている」スパーホークはしばらく考えこんだ。「ところで、最近スティリクム人を見かけなかったかね」
「スティリクム人ですか。いいえ、連中はこの森には足を踏み入れません。このあたりの人間はスティリクム嫌いで、そのことはよく知れ渡ってますから」
「なるほど。伯爵の屋敷までどのくらいの距離だと言ったかな」
「言ってませんよ。まあ十五リーグってとこです」
Posted by childishgut at 15:28│Comments(0)